くろじいの小屋
COLUMN


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54  2003年4月7日      2003.12.25
 天才、お茶の水博士の手によってアトムが誕生した日である。
 
手塚治虫が「鉄腕アトム」を描き始めたのは既に50年も前の事だ。
その時のアトムの誕生日が西暦2003年4月7日。
「メトロシティの全エネルギーが科学省に集結する。すざまじいエネルギーを受けて一体の少年ロボットがお茶の水博士の手によって目覚めた」
全ての物語はここから始まる。
科学省という呼び名も現在に通じるものを予感させていたのかも・・・
 
 ホンダの二足歩行ロボット「ASIMO」が世界を驚嘆させたのは記憶に新しい。
先日もソニーの走るロボットが公開され、世界各国の報道陣から多くの取材を受けていた。
開発陣が必ず口にする言葉。
「アトムのような」「アトムを観て」「アトムを作りたくて」・・・・・
これほど迄に、人型ロボットに抵抗が無いのは日本人だけらしい。
人型ロボットでは無いが、日本で初めて本格的な工作ロボットが設置されたのは今は無き日産の座間工場。工員達は一台一台親しみを込めてニックネーム(当時のアイドル百恵ちゃんなど)をつけたそうだ。この感覚はとても日本人らしい。
 
 それは・・・東京池袋ににほど近い、西武池袋線、東長崎にあったボロアパート「トキワ荘」から始まる。
手塚治虫はじめ同居人であった石森章太郎の「サイボーグ009」〜「キカイダー」〜「仮面ライダー」。
同じく手塚に憧れて二人で上京した藤子コンビの手による猫型ロボット「ドラえもん」。
時は流れるが石森のアシスタントであった永井豪による「マジンガーZ」。
くろじいが崇拝するギャグマンガの神様、赤塚不二雄だけはちと違ったけど・・・彼は元々少女漫画を目指して「秘密のアッコちゃん」を生み出した。
これらの作品を観て育った世代が完成させる集大成「ガンダム」。
前出のソニーのロボットの足に見える関節部分のクッションなどはガンダムそっくりだ。
他にもアトムに触発されて誕生したロボット漫画は数知れず・・・
機械好きの少年達はみんなみんなお茶の水博士を目指したのである。
それだけ手塚治虫が与えて来た影響は大きいのだ。
 
話はロボットだけに限らない。
入院中のある日、俺はベットでブラック・ジャックを読んでいた。(何故かM病院にはブラック・ジャックとゴルゴ13がいっぱい置いてあった)そこへ脳外科の回診。
 
DrS  「お〜クロちゃんおもしろいの読んでるじゃ〜ん」
 
俺   「先生〜治るって言っても5千万も1億も払えないよ〜」
 
DrS  「大丈夫!大丈夫!3回に1回は50円とかだろ〜」
 
俺   「先生!やけに詳しいね」
 
DrS  「だって俺それ読んで医者になったんだもん」
 
俺   「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 
ここ最近の医療ショー(モーターショーの医学版)では、もうサイボーグと呼んだ方が良い義手や義足が競うように発表されている、人工皮膚はターミネーターそのものだ。
ロボットやサイボーグが一般化されるのはそれほど遠い話では無い。
 
慶応大学の医学部でもブラック・ジャックを読んで医者を志した人達の祭典が開かれた。
 
手塚治虫は偉大なのだ。
彼のライフワークであった「火の鳥」では、輪廻転生を壮大なスケールで男女の出会いに重ねて描き出し。レオでおなじみの「ジャングル大帝」では、細かい動物描写でディズニーに模倣されるまでにもなった。
それらに共通して描き出されているのは徹底したヒューマニズム。
そして体制への批判と社会風刺を通しての人間への警告。
 
例えばブラック・ジャック(本名 間 黒男)がツギハギだらけの身体をしているのは、第二次世界大戦中に米軍が落とした不発弾を、日本政府の役人が適当な処理をしたためによる爆発事故で出来た傷。
この事故で母を亡くし、黒男自身も助からないところを名医、本間丈太郎に助けられ医師をを志す。
ブラック・ジャックが膨大な医療費を請求するのは、母の命を奪った者への復讐資金と、自然を愛するために彼が買い続ける無人島の購入資金のため。
法外な医療費を請求するため、彼に医師免許を与えない日本医師会への批判も込められる。
彼の顔の皮膚が半分黒いのは、瀕死の重傷の時の移植手術で、幼い黒人の友人だけが彼に皮膚を提供してくれたためだ。
それは顔の色を中傷する場面で人種差別として痛烈に描かれる。
 
「人間が・・・生き物の生き死にを・・・どうこうしようなんて・・・おこがましいとは思わないかね?・・・・」
 
これはブラック・ジャックが、医学的に完璧なオペをしながらも助ける事が出来なかった恩師 本間丈太郎がブラック・ジャック本人へ残した言葉である。
 
手塚作品全てに通ずるのは「初めに人間ありき」・・・・・・
冷たい金属に温かい人間の心を宿したい。
アトムが今でも日本人の心をとらえて離さない理由はこれに尽きると思う。
 
♪こ〜ころ〜やさし〜ラララか〜がく〜の子〜みんな〜のともだ〜ち鉄腕アト〜ム〜♪
 
これ程までに日本人に大きな影響を与え続け、
アニメーションという文化を世界に知らしめた手塚治虫・・・・・
その彼が国民栄誉賞を受賞出来ない原因は、「作品中に体制批判が多いから」というのが理由らしい。
 
なんともしょぼい国、日本である。
 
一つ大きな危惧がある。
ここ数週間で自衛隊のイラク先遣隊が出発する、平和維持活動の名の下に。
ここで是非を論じるつもりは無い。
「良い悪いは別として、死を覚悟して乗り込んだ船の甲板上で、岸壁にまで来て反対するのはやめてほしい。決意が揺らぐから・・・」
東ティモールの時の自衛官の言葉が忘れられない。
これからも平和の名の下の戦争は続く。
最先端ロボット技術は即戦闘兵器に転換出来るという事。
二足歩行人型ロボットは人間の感覚で操作しやすい。
 
この最先端技術をアメリカが放っておくとは到底思えない。
最初は地雷除去など、「平和利用」の大義名分だろうが・・・・・
 
お茶の水博士が泣いている。


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